• コミュニケーション論

    [Communication Studies]

    開講情報
    • 1年次後期

      講義

      1.5単位選択

    担当教員
    • 教授實川 眞理子

    備考  

    概要

    ふわっと語られる「コミュニケーション能力」とは何か?そもそもコミュニケーションとは何であろうか?Communication Scienceという学問領域はこれを定義することから始まる。しばしば道徳や倫理として語られるコミュニケーションを、行動科学の観点から学生と一緒に考えていきたい。
    ・授業の実施方法(諸般の事情により変更が必要な場合はお知らせします。)
    この授業は全て対面授業で構成する。

    授業の一般目標

    ・コミュニケーションを可視化し、考察の対象とすることができる。
    ・自分の経験を含めてコミュニケーションについて、授業で学んだ理論・概念を用いて議論でき、ミスコミュニケーションを修正する可能性を高める。
    ・認知科学、心理学、社会学、言語学といったコミュニケーションを理解するのに必要な諸々の実証的行動科学の研究方法に触れる。
    ・一つの物理的事実についての無限に可能な多様な解釈を、参加者の複次的なやり取りを通して一つの解釈、一つの定義に収斂させ、それを維持し、補強していくことで人と人の協働と共同生活、人間関係を築くコミュニケーションを分析し肯定的に活用することができる。

    準備学習(予習・復習)

    ・この授業では、コミュニケーション論が行動科学として発達するなかで、歴史的に大切な諸理論と実証研究の基本的な概要を学びます。机上の空論ではなく、クラスでのディスカッションを通して実体験として「腑に落ちる」学びを得ていきます。そのため、講義の後は、指示された文献をもとに、具体的な事例で理論を説明できるかなどの応用を試みノートにまとめてください。この作業には150分程度の時間が必要です。

    学習項目・学生の到達目標

    No. 学習項目 担当教員 学生の到達目標
    1 コミュニケーションとは何だろう 實川 ・コミュニケーションを科学的研究の対象と考えることができる。
    ・科学的研究とは何かを考えることができる。
    2 コミュニケーションの歴史と2つのモデル 實川 ・自らが経験したり観察した不適切なコミュニケーション、コミュニケーションの失敗や副作用から、理想のコミュニケーションのモデルを考案する。
    ・「五感」(知覚)と「記憶」がコミュニケーションで果たす役割を理解する。
    3 コミュニケーション研究の歴史 實川 ・コミュニケーション研究の歴史を通して、人々がコミュニケーションをどのように理解し、何をしようとしていたのかを理解する。
    4 コミュニケーション研究の方法 實川 ・事例を通してコミュニケーション研究で使用される複数のモデルの、それぞれの長所・短所を踏まえて、選択的に使い分けることができる。
    ・発達段階におけるSignificant Others(大切な他者)の役割と社会化がコミュニケーションに与える影響を説明できる。
    5 可視化とメタ認知:「異なる世界に生きている同居人」
    實川 ・ミスコミュニケーションの大きいな原因である脳内イメージについて理解できる。
    ・人々が存在する物理的環境と各人がもつ環境認知(脳内イメージ)が異なること、その異なることが環境適応行動に影響していることを説明できる。
    ・たとえ、とくに隠喩(メタファー)を、理解する。ICT情報通信・情報処理の隠喩を使って、人間の知覚入力と情報処理を語ることができる。
    6 「解釈」と「知覚」:旧い情報と新しい情報の出会い 實川 ・「人は、現実を見るのではなく、解釈を見て解釈を記憶し解釈を再生する」ことを説明できる。
    ・人(自分も含む)は対象を見て判断する、という思い込みを捨てて、判断してから見ているという可能性が理解できる。
    ・大人のコミュニケーションの効率性と子どものコミュニケーションの創造性について考える。
    7 「注意」:有限資源である注意の配分と解釈 實川 ・「注意」が、五感と記憶に与える影響を理解する。
    ・「意味づける」・「解釈する」行為をコミュニケーション過程の重要な部分として理解する。
    8 「まとまり」「分かれ目」 實川 ・解釈してから対象を見ている例として、何を対象の境界としているか、その脳内イメージの形成において、ゲシュタルト(全体)感覚、パーシング(構造分析)、チャンキング(まとまりに分割すること)がどのように行われているか理解する。
    9 「記憶」研究の歴史とスキーマ理論 實川 ・20世紀初頭の「構成的記憶」理論の導入から、現在の記憶とコミュニケーション過程分析までの概論と
    スキーマ理論を学び、コミュニケーション過程をスキーマ理論で分析できる。
    ・記憶研究史を概観し、記憶研究の基本枠組が理解できる。
    10 スキーマ理論:スキーマ、スクリプト、ストーリーグラマー 實川 スキーマ理論の展開と下位概念の諸理論の概略を学び、コミュニケーション過程の分析に応用することができる。
    11 スキーマ理論:プライミング、フレイミング、アンカリング 實川 コミュニケーション過程に紛れ込む「バイアス」「固着」「歪み」「操作・誘導」を心理学・社会心理学理論から考えることができる①
    12 スキーマ理論:目撃証言の歪み、判断のバイアス、ヒューリスティックス 實川 コミュニケーション過程に紛れ込む「バイアス」「固着」「歪み」「操作・誘導」を心理学・社会心理学理論から考えることができる②
    13 認知的不協和、自己成就する予言
    スキーマのずれと「笑い」
    實川 コミュニケーション過程に紛れ込む「バイアス」「固着」「歪み」「操作・誘導」を心理学・社会心理学理論から考えることができる③
    14 日本語と役割スキーマ
    文化記号論
    實川 ・日本語母語者が用いる家族呼称から、目的達成の手段としての会話における役割スキーマについて論考できる。
    ・「ことば」という記号の「恣意性」と、恣意的なことばを「定義」することが、人の行動をどのように変化させるかを理解できる。
    15 総括・まとめ

    No.1

    学習項目 コミュニケーションとは何だろう
    担当教員 實川
    学生の到達目標 ・コミュニケーションを科学的研究の対象と考えることができる。
    ・科学的研究とは何かを考えることができる。

    No.2

    学習項目 コミュニケーションの歴史と2つのモデル
    担当教員 實川
    学生の到達目標 ・自らが経験したり観察した不適切なコミュニケーション、コミュニケーションの失敗や副作用から、理想のコミュニケーションのモデルを考案する。
    ・「五感」(知覚)と「記憶」がコミュニケーションで果たす役割を理解する。

    No.3

    学習項目 コミュニケーション研究の歴史
    担当教員 實川
    学生の到達目標 ・コミュニケーション研究の歴史を通して、人々がコミュニケーションをどのように理解し、何をしようとしていたのかを理解する。

    No.4

    学習項目 コミュニケーション研究の方法
    担当教員 實川
    学生の到達目標 ・事例を通してコミュニケーション研究で使用される複数のモデルの、それぞれの長所・短所を踏まえて、選択的に使い分けることができる。
    ・発達段階におけるSignificant Others(大切な他者)の役割と社会化がコミュニケーションに与える影響を説明できる。

    No.5

    学習項目 可視化とメタ認知:「異なる世界に生きている同居人」
    担当教員 實川
    学生の到達目標 ・ミスコミュニケーションの大きいな原因である脳内イメージについて理解できる。
    ・人々が存在する物理的環境と各人がもつ環境認知(脳内イメージ)が異なること、その異なることが環境適応行動に影響していることを説明できる。
    ・たとえ、とくに隠喩(メタファー)を、理解する。ICT情報通信・情報処理の隠喩を使って、人間の知覚入力と情報処理を語ることができる。

    No.6

    学習項目 「解釈」と「知覚」:旧い情報と新しい情報の出会い
    担当教員 實川
    学生の到達目標 ・「人は、現実を見るのではなく、解釈を見て解釈を記憶し解釈を再生する」ことを説明できる。
    ・人(自分も含む)は対象を見て判断する、という思い込みを捨てて、判断してから見ているという可能性が理解できる。
    ・大人のコミュニケーションの効率性と子どものコミュニケーションの創造性について考える。

    No.7

    学習項目 「注意」:有限資源である注意の配分と解釈
    担当教員 實川
    学生の到達目標 ・「注意」が、五感と記憶に与える影響を理解する。
    ・「意味づける」・「解釈する」行為をコミュニケーション過程の重要な部分として理解する。

    No.8

    学習項目 「まとまり」「分かれ目」
    担当教員 實川
    学生の到達目標 ・解釈してから対象を見ている例として、何を対象の境界としているか、その脳内イメージの形成において、ゲシュタルト(全体)感覚、パーシング(構造分析)、チャンキング(まとまりに分割すること)がどのように行われているか理解する。

    No.9

    学習項目 「記憶」研究の歴史とスキーマ理論
    担当教員 實川
    学生の到達目標 ・20世紀初頭の「構成的記憶」理論の導入から、現在の記憶とコミュニケーション過程分析までの概論と
    スキーマ理論を学び、コミュニケーション過程をスキーマ理論で分析できる。
    ・記憶研究史を概観し、記憶研究の基本枠組が理解できる。

    No.10

    学習項目 スキーマ理論:スキーマ、スクリプト、ストーリーグラマー
    担当教員 實川
    学生の到達目標 スキーマ理論の展開と下位概念の諸理論の概略を学び、コミュニケーション過程の分析に応用することができる。

    No.11

    学習項目 スキーマ理論:プライミング、フレイミング、アンカリング
    担当教員 實川
    学生の到達目標 コミュニケーション過程に紛れ込む「バイアス」「固着」「歪み」「操作・誘導」を心理学・社会心理学理論から考えることができる①

    No.12

    学習項目 スキーマ理論:目撃証言の歪み、判断のバイアス、ヒューリスティックス
    担当教員 實川
    学生の到達目標 コミュニケーション過程に紛れ込む「バイアス」「固着」「歪み」「操作・誘導」を心理学・社会心理学理論から考えることができる②

    No.13

    学習項目 認知的不協和、自己成就する予言
    スキーマのずれと「笑い」
    担当教員 實川
    学生の到達目標 コミュニケーション過程に紛れ込む「バイアス」「固着」「歪み」「操作・誘導」を心理学・社会心理学理論から考えることができる③

    No.14

    学習項目 日本語と役割スキーマ
    文化記号論
    担当教員 實川
    学生の到達目標 ・日本語母語者が用いる家族呼称から、目的達成の手段としての会話における役割スキーマについて論考できる。
    ・「ことば」という記号の「恣意性」と、恣意的なことばを「定義」することが、人の行動をどのように変化させるかを理解できる。

    No.15

    学習項目 総括・まとめ
    担当教員
    学生の到達目標

    教科書

    書名 著者名 出版社名
    指定しない。必要文献はmanabaに掲示する

    参考書

    書名 著者名 出版社名
    特に指定しないが、心理学、文化記号論、社会学、言語学など幅広く挑戦してください。授業に関係がないことでも、議論がしたければいつでも気軽に研究室に遊びにきてください。そうした多分野横断的・複眼的な思考がコミュニケーションとは何かの理解をより深めるのに役立ちます。

    成績評価方法・基準

    定期試験 70%、平常点(提出物等) 30%。ただし履修者数によっては、学生と合意の上で変更することもある。

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